税務上、SOHO物件の家賃は経費計上できる?
“住む+働く”を両立するSOHO賃貸で知っておくべき税務の基本。
在宅勤務や個人事業が当たり前になった今、
「自宅兼オフィス=SOHO物件」で働く人が急増しています。
そんな中でよく聞かれるのが、
「SOHO物件の家賃って、どこまで経費にできるの?」
という素朴な疑問。
結論から言えば、業務で使っている部分の割合に応じて経費計上は可能です。
ただし、全額ではなく「按分(あんぶん)」という合理的な計算が必要になります。
この記事では、税務上の考え方から按分の計算方法、個人契約と法人契約の違いまで、
SOHO家賃を正しく経費化するための実務ポイントをわかりやすく解説します。
1. SOHO物件の家賃は経費にできるの?
結論から言うと、SOHO物件(住居兼オフィス)の家賃は一部を経費計上できます。
ただし、全額ではなく「業務使用割合」に応じた按分計算が必要です。
個人事業主やフリーランスの場合、
「自宅の一部を事務所として使っている」状態なので、
仕事に使った部分だけを“必要経費”として認めてもらえるという仕組みです。
2. 経費計上の基本ルール:「按分(あんぶん)」とは?
「按分」とは、家賃などの費用を“仕事用と私用に分ける”こと。
税務上は、仕事に使っている面積や時間の割合で按分します。
たとえば:
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自宅(40㎡)のうち10㎡を作業スペースとして使用 → 按分率25%
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家賃20万円 × 25% = 5万円を経費計上
按分率を決めるときは、面積だけでなく使用時間(例:1日8時間使用)も考慮して合理的に説明できることが重要です。
税務署に提出を求められた場合、**「根拠を明確に説明できること」**が前提となります。
3. 家賃以外にも経費計上できる費用
SOHOとして使っている場合、家賃だけでなく下記のような費用も一部経費にできます。
項目 | 按分の考え方 |
---|---|
光熱費(電気・ガス・水道) | 使用時間・面積割合で按分 |
通信費(インターネット・携帯) | 仕事利用割合で按分(例:70%) |
家財・備品 | 業務で使う机・椅子・パソコンなどは全額経費可 |
管理費・共益費 | 家賃と同じ割合で按分 |
火災保険料 | 保険の対象範囲に応じて按分可能 |
重要:すべて「合理的な基準」で按分すること。
根拠のない“高すぎる経費割合”は、税務調査で否認される可能性があります。
4. SOHO物件の契約形態による違い
● 個人名義契約の場合
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原則、業務使用部分の家賃のみ経費
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契約書の名義が個人でも問題なし(確定申告時に按分計算で対応)
● 法人名義契約の場合
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原則、全額を法人経費に計上可(ただし居住部分の扱いに注意)
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社長や役員が住む場合は、「社宅扱い」として一部を給与課税対象にする必要あり
ワンポイント
法人契約では、使用実態に応じた「社宅規程」や「賃貸借契約書の備考欄」で
“SOHO利用の明記”があると安全です。
5. 税務処理で注意すべきポイント
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契約書・領収書の保存:必ず自分名義で。家賃振込記録も明確に。
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按分率の根拠メモ:間取り図や作業スペースの面積計算を残しておく。
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用途の明記:「SOHO利用」「事務所兼自宅」などの注記があるとスムーズ。
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共益費・水道光熱費も一緒に整理:同じ按分率で処理できる。
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家事按分の過大計上に注意:税務署は「50%以上の按分」を特に注視しています。
6. 具体例で見る経費計上シミュレーション
家賃 180,000円/面積40㎡(うち10㎡を業務利用)/光熱費15,000円
項目 | 按分率 | 経費計上額 |
---|---|---|
家賃 | 25% | 45,000円 |
光熱費 | 25% | 3,750円 |
合計 | — | 48,750円/月 × 12 = 585,000円/年 |
このように、1年で約60万円弱を経費として処理可能。
ただし、業務内容・使用状況に応じて按分率を調整する必要があります。
7. 経費計上をスムーズにするための工夫
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会計ソフト(freee/マネーフォワード)に家事按分機能を登録
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「SOHO経費用口座」を分けておくと整理がラク
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税理士に相談して「按分基準」を毎年見直す
まとめ:SOHO家賃の経費化は「説明できる合理性」が鍵
SOHO物件の家賃は、“どの程度仕事に使っているか”を明確に示せば経費計上可能です。
面積・時間・利用実態を根拠に按分率を算出し、記録を残すことが重要。
“おしゃれなSOHO”も、“数字に強いSOHO”でこそ長く続く。
デザインと会計、両方のバランスを大切にしましょう。