なぜ「売れにくい家」ほど、丁寧な査定が必要なのか

なぜ「売れにくい家」ほど、丁寧な査定が必要なのか

不動産の現場にいると、よくこんな言葉を耳にします。
「この家、ちょっと売りづらいんですよね」。

駅から遠い。
間取りが独特。
ガレージやアトリエがある。
用途が少しグレー。
市場で主流ではない。

いわゆる「売れにくい家」と呼ばれる住宅です。

ですが、私はこの言葉を聞くたびに、少し違和感を覚えます。
それは本当に“売れにくい”家なのでしょうか。
それとも、価値の伝え方が雑なだけなのでしょうか。


「平均値」で測られると、個性は欠点になる

一般的な査定は、過去の成約事例や相場をもとに「平均値」で行われます。
この方法は、条件が整った住宅にはとても有効です。

しかし、
・設計者の思想が色濃く出ている
・趣味や仕事と深く結びついている
・住み方によって評価が大きく変わる

こうした住宅は、平均値の物差しにかけた瞬間、
個性がそのまま“マイナス要因”として処理されてしまうことがあります。

結果として、
「相場より下げないと厳しいですね」
「時間がかかると思います」
という結論だけが残る。

それは、本当に正しい評価でしょうか。


売れにくいのではなく、「伝わっていない」

ガレージ付き住宅は、
「駐車場が狭い」「使わない人には不要」と言われがちです。

アトリエ付き住宅は、
「一般的ではない」「需要が限られる」と敬遠されます。

ですが実際には、
それを“探している人”は、確実に存在します。

問題は、
・誰に向けた家なのか
・どんな暮らしが成立するのか
・なぜこの形になったのか

そうした背景が、ほとんど語られていないことです。

売れにくい家とは、
価値がない家ではなく、翻訳されていない家なのだと思います。


丁寧な査定とは、「価格を決める作業」ではない

私が考える丁寧な査定は、
単に数字を並べることではありません。

  • どんな思想でつくられたのか

  • どんな人の生活にフィットするのか

  • 一般市場ではなく、どの層に刺さるのか

  • 将来、どんな出口(売却・賃貸・活用)が考えられるのか

こうした視点を一つひとつ整理し、
その家が“生きる場所”を見つけてあげる作業です。

時間はかかります。
即答もできません。

ですが、この工程を省いたまま価格だけを下げていくことこそ、
本当の意味で「売れにくくする行為」だと感じています。


「売れにくい家」は、誰かの「理想の家」になり得る

市場のど真ん中にない家ほど、
深く刺さる相手は、強く共感します。

「やっと見つけた」
「こういう家を探していた」

そう言われる瞬間は、
数字では測れない価値が確かに存在していた証拠です。

だからこそ、
売れにくい家ほど、雑に扱ってはいけない。
売れにくい家ほど、丁寧に向き合う必要がある。

私はそう考えています。


不動産を、価格ではなく「生き方」から評価する

住まいは、単なる商品ではありません。
そこには、時間と選択と、美意識が積み重なっています。

もし、
「この家、うまく評価してもらえていない気がする」
そう感じたことがあるなら、
一度立ち止まって、暮らしの背景から整理してみる価値はあるはずです。

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