恵比寿に生まれた、小さな森と暮らす建築
恵比寿・渋谷を日常のフィールドにしながら、光や風、緑、そして遠くまで抜ける景色と暮らす。

2026年6月、都心の開けた一角に誕生した、地上9階建ての新築デザイナーズマンションです。
設計を手がけたのは、長谷川豪建築設計事務所・長谷川豪氏。
計画の起点となったのは、この場所ならではの「抜け」と「引き」でした。
周辺環境を丹念に読み解き、将来にわたって確保される3方向への眺望の抜けと、周囲の建物との距離が生み出す余白に着目。それらを一部の住戸だけではなく、すべての住戸で享受できる建築が構想されています。

すべてが角部屋。街と空へ視線が抜ける
5つの住戸タイプは、すべて2面採光の角住戸。
建物そのものを三叉状に構成することで、各住戸に異なる方向への視線の抜けをつくり、フルハイトの大きな窓から光と風景を室内へと引き込みます。
高層階では、都心にいることを一瞬忘れるほど遠くまで伸びる眺望を。
低層階では、窓のすぐ先で揺れる木々や、季節ごとに表情を変える緑を。
同じ建築でありながら、階によってまったく異なる風景が暮らしの一部となります。

敷地の半分以上を、“森=GROVE”へ
この建築を語るうえでもうひとつ欠かせないのが、建物を包み込む豊かな緑です。
建物を角地側へ寄せることで、隣接する建物や道路との間にゆとりある空地を確保。そこに多種多様な植物を配し、敷地面積の半分以上を緑豊かな「GROVE」として計画しています。
さらに、三叉状の建物のくびれから生まれるポケットには、それぞれシンボルツリーを配置。
エントランスでは住人を迎える風景となり、低層階では外からの視線を柔らかく遮りながら、室内へ瑞々しい緑を届けます。
植栽設計を手がけたのは、PARSLEY・宇津木英俊氏。
緑を単なる外構として添えるのではなく、建築と植物をひとつの風景としてつくり上げていることも、この建物の大きな魅力です。
光と緑を取り込む、ニュートラルな一室
今回ご紹介するのは2階の一室。

スクエアに近い整形のプランは家具のレイアウトがしやすく、住居としてはもちろん、オフィスなどの使い方にも相性のよい空間です。

生活感の出やすい水まわりは扉の内側へすっきりと収めることができ、空間全体の印象を損なわない設計。

2面に設けられた大きな窓から自然光が入り、窓を開けば風が室内を通り抜ける。そのガラスの向こうには、GROVEの木々。

内と外の境界をできるだけ軽やかに扱うことで、都市の住まいでありながら、どこか屋外と連続しているような独特の開放感が生まれています。

床にはモルタルを採用。
外部空間を思わせる少しラフな質感を持ちながら、特定のインテリアテイストを押しつけない、ニュートラルな背景として機能します。
ヴィンテージ家具を合わせてもいい。
潔くミニマルに整えてもいい。
アートや植物を主役にしてもいい。
建築の個性はしっかりとありながら、住む人、使う人の感性を受け止めてくれる「余白」が残されています。

都市に暮らしながら、自然の気配と暮らす
都心に暮らすことと、自然を感じながら暮らすこと。
そのふたつを対立させるのではなく、ひとつの住空間の中で心地よく共存させる。
忙しい都市生活の合間に、光の入り方や風の気配に気づく。窓辺の木々を眺め、刻々と色を変える空を楽しむ。
恵比寿に生まれたこの“小さな森”は、都市の利便性だけでは語れない、これからの東京の暮らし方を静かに提案しているように思います。
2026年6月竣工|地上9階建て
設計:長谷川豪/長谷川豪建築設計事務所
植栽設計:宇津木英俊/PARSLEY
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写真や記事だけでは伝わりきらない、小さな森のワークスペース。
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